地震後に外壁タイルが剥がれる?マンション管理の点検と対策
1.地震で外壁タイルが剥がれるのはなぜ?
地震が起きたからといって、すべての外壁タイルが剥がれるわけではありません。 しかし、地震によって建物が変形すると、外壁タイルやその接着部分にも力が加わります。 経年劣化などが進んだ建物では、地震後の状態確認が特に重要です。
建物の揺れによってタイルにも力が加わる
外壁タイルは、モルタルや接着材などを介して建物の躯体に取り付けられています。 地震によって建物が揺れたり変形したりすると、外壁タイルにもその動きに伴う力が加わります。
日本建築学会構造系論文集に掲載された研究では、外壁タイル張りを施した鉄筋コンクリート壁を振動台で加振し、地震時の挙動を検証しています。
実験では、標準的な工法によるタイル張りについて、壁の変形が大きくなるにつれてタイルが徐々に剥落する現象が確認されました。[1]
これは、地震が外壁タイルの剥離・剥落に関係し得ることを示す実験結果です。 ただし、実際の建物で剥落が発生するかどうかは、建物の構造、タイルの施工方法、劣化状態、地震動などによって異なります。
「一定以上の震度なら必ず剥がれる」といった単純な判断はできません。
地震前から存在する「浮き」にも注意
外壁タイルでは、タイルと下地との間などが部分的に接着していない「浮き」が生じることがあります。
浮きは、経年による材料の劣化、温度変化、下地のひび割れ、施工状態など、さまざまな要因によって発生します。
問題なのは、浮きが外から見ただけでは分からない場合があることです。
目立ったひび割れやタイルの欠損がなくても、内部では接着状態が変化している可能性があります。 そのため、地震後の確認では「タイルが落ちていないから問題ない」と考えるのではなく、もともとの劣化状態も含めて確認する視点が重要です。
特に、以前の外壁調査で浮きを指摘されている建物や、長期間外壁の詳しい調査を行っていない建物では、地震をきっかけに状態を再確認することを検討しましょう。
2.地震後にまず確認したい外壁の異変
地震後の外壁確認で最も重要なのは、安全を確保したうえで状況を把握することです。 タイルの落下や大きなひび割れなどが見つかった場合、自分で詳しく確認しようとして外壁へ近づくことは避け、専門家への相談を検討してください。
1.最初に優先するのは「調査」より安全確保
大きな地震の後には、その後も強い揺れを伴う地震が発生する可能性があります。
気象庁は、大地震後について、最初の地震と同程度の地震への注意を1週間程度呼びかけることを基本としており、 強い揺れによって建物などの強度が低下している可能性があるため、危険な場所へ不用意に近づかないよう注意を促しています。[2]
外壁タイルが落下している、外壁に大きな損傷が見られるといった場合も、まずは建物周辺の安全確保を優先してください。
管理会社や管理組合による初動対応としては、状況に応じて次のような対応が考えられます。
- タイルなどの落下物がある場所へ人を近づけない
- 外壁直下の通路や駐車スペースなどの利用を必要に応じて制限する
- 地上から安全に確認できる範囲を記録する
- 損傷位置や発見日時を写真とともに残す
- 管理会社、建築士、外壁調査会社などへ相談する
これらは地震後の外壁管理における一般的な運用例であり、建物の状況によって必要な対応は異なります。
2.地上から確認したい代表的なサイン
安全な場所から外壁を確認できる場合は、まず目視で明らかな変化がないか確認します。
例えば、次のような状態は専門的な確認を検討するきっかけになります。
- 外壁タイルが落下している
- タイルの一部が欠けている
- 地震前にはなかったひび割れがある
- タイルの並びにずれや段差が見える
- 目地部分に大きなひび割れがある
- モルタルやコンクリートが欠損している
- 外壁の一部が膨らんでいるように見える
ただし、これらが確認できないからといって、外壁内部に異常がないとは限りません。
外壁タイルの「浮き」は目視だけでは判断しにくいため、疑わしい場合には専門的な調査が必要になります。
3.「自分で叩いて確認」は避ける
タイルの浮きを調べる方法として、タイル表面を叩いて音を確認する「打診調査」があります。
しかし、専門知識のない人が地震後の外壁へ近づき、自分でタイルを叩いて確認することはおすすめできません。
外壁材が不安定になっている場合には、落下物による事故につながる可能性があります。また、高所や脚立を使用しての確認は別の事故を招くおそれがあります。
管理会社・管理組合では、安全な範囲で外観を記録するところまでを初動対応とし、詳細な状態確認については専門家に相談する方法が適切です。
3.見た目だけでは分からない「浮き」をどう調べる?
地震後の外壁で判断が難しいのが、外から見えないタイルの「浮き」です。 外観上は問題がないように見えても、接着部分の状態までは目視だけでは分かりません。 そこで、打診や赤外線などを用いた専門的な外壁調査が行われます。
1.従来から用いられている打診調査
打診調査は、テストハンマーなどで外壁表面を叩き、その反響音などからタイルの浮きを確認する方法です。
調査員が外壁へ直接アクセスする必要があるため、高所では足場、ゴンドラ、高所作業車などが必要になる場合があります。
一方で、実際に外壁へ接触して確認できる点は打診調査の特徴です。
地震後に異常が疑われる部分が限定されている場合や、補修範囲を詳しく確認する場合など、建物の状況によって適切な調査方法を選ぶ必要があります。
2.赤外線調査という選択肢
外壁調査では、赤外線装置を利用した方法もあります。
国土交通省は、定期報告制度におけるタイル、石貼り、モルタルなどの外壁調査について、 2022年1月の告示改正により、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する方法として、無人航空機による赤外線調査を明確化しました。[3]
つまり、一定の条件を満たしたドローンによる赤外線調査は、公的な外壁調査制度でも位置付けられている方法です。
ドローンを利用すれば、高所の外壁へ調査員が直接近づかなくても、建物の広い範囲を撮影できます。
特に地震後、「外観には大きな損傷が見当たらないものの、外壁全体の状態を確認したい」というケースでは、調査方法の選択肢のひとつとなります。
3.ドローン赤外線調査も万能ではない
ただし、「ドローンを飛ばせば、どんな建物でも正確に診断できる」というわけではありません。
国土交通省が認めているのも、あくまで所定の条件のもとで打診と同等以上の精度を有する赤外線調査です。[3]
赤外線調査は天候や日射、外壁の材質・状態などの影響を考慮する必要があります。 また、建物周辺の環境や航空法上の条件などによって、ドローンを飛行できない場合もあります。
そのため、外壁診断では「打診かドローンか」の二者択一ではなく、建物の状況や調査目的に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
株式会社ジェブの「剥落防止くん」でも、ドローンによる赤外線診断を基本としながら、建物の状況に応じた調査・施工計画をご提案しています。[4]
ドローンによる赤外線診断イメージ
4.異常が見つかったときの補修・剥落防止
外壁調査で浮きや損傷が確認されたからといって、すべてのタイルを張り替えるとは限りません。 異常が発生している場所や範囲、下地の状態などを確認し、それぞれの建物に適した補修方法を検討します。
1.調査結果をもとに補修方法を決める
外壁タイルの補修には複数の方法があります。
代表的なものとして、浮きが生じた部分へ樹脂などを注入する方法や、アンカーピンを使用して固定する方法、タイルを撤去して張り替える方法などがあります。
地震後にタイルの浮きが見つかった場合も、「浮いている=すぐ全面改修」と判断するのではなく、まず異常の範囲を把握することが重要です。
調査結果を図面や写真などに整理しておけば、補修の優先順位や工事範囲を管理組合で検討する際にも役立ちます。
2.「補修」と「剥落防止」は目的を分けて考える
外壁管理では、劣化部分そのものを直す「補修」と、万一接着力が低下した場合でもタイルを落下させにくくする「剥落防止」を分けて考えることも重要です。
建物の状態によっては、部分的な補修と剥落防止対策を組み合わせる方法も考えられます。
例えば、人が頻繁に通るエントランスや歩道に面した外壁などでは、タイルが落下した場合の影響を考慮して優先的に対策を検討するという考え方があります。
ただし、必要な対策は建物ごとに異なるため、調査結果を確認したうえで専門家と検討してください。
3.ドローン診断と剥落防止を組み合わせた「剥落防止くん」
株式会社ジェブの「剥落防止くん」は、ドローンによる赤外線外壁診断と、タイル剥落防止コーティングを組み合わせたサービスです。[4]
まず赤外線カメラを搭載したドローンで外壁を調査し、撮影データを解析して外壁の状態を整理します。その結果をもとに施工範囲や対策を検討する流れです。
タイル剥落防止には、特殊なポリウレア樹脂塗料によって透明な塗膜を形成する「タイルホールド工法」を採用しています。
透明な塗膜を使用するため、既存タイルの意匠を生かしながら剥落対策を行えることが特徴です。[4]
地震後の外壁確認では、単に「異常があるか調べる」だけではなく、異常が確認された場合に「どう補修し、今後どう守るか」まで考えることが建物管理では重要になります。
「剥落防止くん」ドローン調査イメージ
5.地震をきっかけに外壁管理の仕組みを見直す
地震後の外壁点検は、その場の安全確認だけで終わらせるのではなく、これまでの点検履歴や修繕計画を見直す機会にもなります。 日頃から建物の状態を記録しておけば、地震前後の変化を比較しやすくなります。
1.定期的な外壁調査が重要な理由
外壁タイルの安全管理は、地震が起きたときだけ行うものではありません。
国土交通省の定期報告制度では、対象となる建築物について、外装仕上げ材等のタイル、石貼り、モルタルなどを対象に、 おおむね6か月から3年以内に一度の手の届く範囲での打診等に加え、 おおむね10年に一度、落下によって歩行者等へ危害を加えるおそれのある部分について全面的な打診等を行う仕組みが示されています。[3]
ただし、実際の定期報告の対象建築物や報告時期などは、建物用途や規模、所在地の特定行政庁によって異なるため、個別に確認する必要があります。
地震後の臨時点検と、こうした通常時の定期的な維持管理を組み合わせることが重要です。
2.調査結果を「履歴」として残す
管理会社・管理組合におすすめしたいのが、外壁の調査結果を継続的に保存することです。
例えば、
- 調査した年月日
- 調査方法
- 外壁の撮影画像
- 浮きやひび割れの位置
- 補修した場所と工法
- 次回確認したい箇所
などを記録しておきます。
地震が発生した際にも、過去の写真や調査結果が残っていれば、「以前から存在していたひび割れなのか」「地震後に新しく発生した変化なのか」を判断する材料になります。
また、管理組合の役員が交代した場合でも、建物の状態や過去の対応を引き継ぎやすくなります。
3.地震後の確認を「臨時点検のルール」にする
ここからは法令上の義務ではなく、建物管理上の運用提案です。
管理会社や管理組合で、一定規模の地震が発生した際に外壁の確認を行うルールをあらかじめ決めておくと、いざというときに対応しやすくなります。
例えば、
- 地震発生
- 安全確保
- 地上から外観確認
- 写真・場所を記録
- 異常があれば立入制限
- 専門会社へ相談
- 必要に応じて外壁診断
- 補修・剥落防止を検討
という流れを管理マニュアルに加えておく方法です。
どの程度の地震を臨時点検の基準とするかは、建物の構造や築年数、過去の劣化状況などによって異なるため、一律の震度を基準として示すことはできません。
過去にタイルの浮きを指摘されている建物などでは、建築士や外壁診断会社と相談しながら、その建物に適した管理基準を決めておくとよいでしょう。
6.まとめ|地震後は「見た目だけ」で判断しないことが大切
地震後の外壁タイルでは、落下やひび割れといった目に見える被害だけでなく、外から確認しにくい「浮き」にも注意が必要です。
建物管理で押さえておきたいポイントを整理します。
- 地震による建物の変形は、外壁タイルの剥離・剥落に関係する可能性があります。
- タイルの落下や大きな損傷がある場合は、近づかず安全確保を優先します。
- 見た目に異常がなくても、外壁内部の浮きまでは目視だけで判断できません。
- 打診や赤外線など、建物の状態に適した方法で専門的な調査を行うことが重要です。
- 地震後の確認だけでなく、日頃から調査・補修履歴を残して計画的に外壁を管理しましょう。
株式会社ジェブの「剥落防止くん」では、ドローンによる赤外線外壁診断から、タイル剥落防止コーティングまで一貫してご提案しています。
「地震後、外壁を一度確認しておきたい」「以前からタイルの浮きが気になっている」といった場合は、現在の状態を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
※建物の状態や立地条件によって、適切な調査方法・補修方法は異なります。
外壁に明らかな損傷がある場合は、危険箇所へ近づかず、建築士や専門業者などへご相談ください。
まずはお気軽にご相談ください!
「剥落防止くん」は、ドローンによる高精度な外壁診断と、タイル剥落防止コーティングを組み合わせたサービスです。
ドローンで撮影した可視カメラ・赤外線カメラのデータを解析し、劣化・浮きのリスクが高い箇所を特定。その上で、専用のコーティング材を用いてタイルの剥落を防止します。
見えないリスクを「見える安心」に変える第一歩。
ドローンによる無料外壁診断+タイルホールドのご提案で、建物の安全と資産価値を守るお手伝いをいたします。
ご相談・お見積もりは無料です!
- 現地調査・診断レポート作成(無料)
- 建物に最適な施工計画をご提案
- ご希望に応じて、認定施工業者のご紹介も可能です
参考文献・出典
- [1] 「水平一方向振動加振実験による外壁タイル張りの耐震性能に関する検討」/三谷一房・小川晴果、日本建築学会構造系論文集/発行日:2010年10月30日/参照日:2026年8月10日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/75/656/75_656_1773/_article/-char/ja/
- [2] 「大地震後の地震活動(余震等)について」/気象庁/公開日:記載なし/参照日:2026年8月10日 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/aftershocks/mitoshi_aftershock.html
- [3] 「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」/国土交通省/公開日:記載なし(2022年1月18日の告示改正内容を掲載)/参照日:2026年8月10日 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000161.html
- [4] 「剥落防止くん」/株式会社ジェブ https://epmcoat.jp/eptcoat/
合わせて読みたい記事
-
コチラの記事で『建物メンテナンスを怠るとどうなる?見逃せない5つのリスクとは』を紹介しているので参考にしてください。
建物メンテナンスを怠るとどうなる?見逃せない5つのリスクとは
建物のメンテナンスは、安全や資産価値を守るうえで欠かせません。「まだ大丈夫」と放置すると、思わぬ事故や高額な修繕につながることも。本記事では、メンテナンスを怠ることで発生しやすい5つのリスクと、具体的な予防策について解説します。
-
コチラの記事で『外壁タイルの「剥がれ」が命に関わる?見落とされがちな落下事故のリスクと、私たちができる対策』を紹介しているので参考にしてください。
外壁タイルの「剥がれ」が命に関わる?見落とされがちな落下事故のリスクと、私たちができる対策
外壁タイルは美観を保つ一方で、経年劣化による浮きや剥落は落下事故の原因にも。特に都市部では人的被害のリスクも高まります。今回は、外壁タイルの剥落リスクと、安全を守るための対策を紹介します。
-
コチラの記事で『いま、なぜドローン診断なのか?~外壁トラブルを未然に防ぐ「空からの眼」~』を紹介しているので参考にしてください。
いま、なぜドローン診断なのか?~外壁トラブルを未然に防ぐ「空からの眼」~
築20年を超える建物の増加により、外壁のタイル剥落やコンクリートの劣化といった問題が顕在化しています。そうした中、安全・正確・効率的な点検手法として、ドローンを活用した外壁診断が注目されています。本記事では、外壁劣化の背景やドローン診断のメリット、導入事例や注意点までを詳しく解説します。

